今回は安武わたる先生の「声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~」106話を読んだので紹介します。

この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 106話 あらすじ
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そうしてその果てに、なんと自分は善助の子ではないという残酷な事実をキサから教えられてしまいます。
それでも悪びれるそぶりさえ見せない母親を瀬島はとうとう完全に見限り、観世を訪ね、彼のもとで新しい名をもらい働き始めました。
こうして冷酷な女衒「瀬島満男」は誕生したのです。
声なきものの唄 106話 ネタバレ
善助が亡くなったことについて責任を感じ、これまでの3年間を悔いながら、瀬島は通夜の最中も父の遺体のそばで涙を流し続けていました。
するとそこへ、夫が餓死したなど思ってもいないのであろう母・キサがいつもの調子で帰ってきます。
キサはまず息子が家にいることに驚き、次いで善助の顔が打ち覆いによって隠されているのを見て、彼の死に気付いたようです。
「いやあ・・・!ウソッ、なんでやあんた・・・っ」
と叫んで泣き崩れ、善助の亡骸にすがりつきましたが、寝たきりの夫を放置して7日間も留守にしていたことをすでに知っている瀬島がそんな母親に対して向ける眼差しは、非常に冷ややかなものでした。
しかも隣に住むスエや大吉の話によれば、キサは長屋にとっかえひっかえ男性を連れ込み、善助の目の前で行為に及ぶことを楽しんでいたといいます。
それらを指摘してむごい仕打ちを非難すると、キサはとたんに涙を引っ込めて怒り出したため、瀬島は思わず
「なんで・・・なんでお父はおめえみてえな女と夫婦になったんや。なんでおめえがわしの母親なんや!!」
と怒声を上げました。
するとキサはそんな我が子に向かって、なんと
「・・・そないに悲しまんでもええやろ、実の父親でもねえのに」
と冷たく言い放ったのです。
信じ難いというよりも信じたくないその言葉に、瀬島は愕然としました。
そして、不意に立ち上がったかと思うと突然キサを組み敷き、
「売女がっ、男なら誰でもええんやろっ」
と罵りながら犯した後に、「畜生の刻印」だと言って彼女の乳首を噛み千切ったのでした。
それからすぐに長屋を出た瀬島が向かったのは、恩人である観世がいる大阪です。
善助の葬儀費用だけはきちんと長屋の差配人に託してきたものの、本当に着の身着のままで故郷を去った瀬島が頼れるのは、以前「何かの時ゃあわしを、難波新地の瀬島観世を頼りぃや」と言ってくれた観世だけだったのでしょう。
観世との再会が叶った時には、かつては美しかった面立ちがすっかりやつれ、険のあるものへと変わってしまっていました。
そんな瀬島は観世に
「名前・・・捨ててえです。新しい名つけたってくだせえ」
と頼み、「満男」と名付けてもらいます。
女をおびき寄せる「蜜を持っとる男」という意味です。
自身のことを「口入れ屋みてえなもん」だと言っていた観世の仕事は「女専門の口入れ屋」・・・すなわち女衒でした。
しかし瀬島は彼のもとで働くことを決め、女衒としての技術と経験を叩き込まれることになります。
そうして瀬島は観世の死後にその仕事を引き継ぎ、観世以上に冷酷だと評判の女衒となってサヨリと出会ってしまったのでした。
声なきものの唄 106話 感想・考察
106話で瀬島の過去編は終了となりました。きちんと働いて真っ当に生きようとしていたはずの少年が、理不尽な挫折や慕っていた父親の死、そして実母の心無い振る舞いによって傷つき、だんだんと人相が険しくなっていく様子は見ていて胸が痛かったです。

自分と血の繋がりがないことを承知していたにもかかわらず、善助が瀬島に惜しみない愛情を注いでくれたという事実は、読者の目から見れば救いのように思えますが、果たして瀬島本人にとってはどうだったのでしょうか。安武わたる先生、いつも素敵なお話をありがとうございます。

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