今回は安武わたる先生の「声なきものの唄～瀬戸内の女郎小屋～」109話を読んだので紹介します。
この記事は高確率でネタバレを含みます。
物語の結末を知りたくない方はご注意くださいませ。
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声なきものの唄 110話 あらすじ
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美蝶は横上や冴路の思惑を阻止すべく、藤富のおトウさんに会いに行きます。彼女の期待した通り、藤富のおトウさんは横上の考えに対して異を唱えてくれました。しかしその直後に藤富のおトウさんは、体調が悪化して倒れてしまったのでした。
声なきものの唄 110話 ネタバレ
立花設計事務所の副所長によって東陽楼まで連れて来られ、酔いつぶれている内に客として美蝶の床に入っていたことに気が付いた栄太は、目覚めるなり慌てて帰ろうとしました。
するとちょうどそこへ冴路という名の娼妓が通りかかり、美蝶に向かって
「お客に逃げられるなんざ、矢津で筆頭っちゅう”格“とやらも怪しいもんやわ」
などとケンカを売るような発言をしたあげく、自分に鞍替えしないかと栄太をしどけなく誘惑します。
美蝶はひとまず普通の客と娼妓として振る舞って栄太を見送った後、険しい顔付きで冴路のことを品がないと評し、人の客を取るのはご法度だと彼女の行為を厳しく咎めました。しかし冴路は反省するどころか、
「女のからだを、客に投げ与えるだけんことやろ、うちらの商売は」と言って美蝶の言葉をせせら笑います。そのうえ冴路はなんとその後楼主の横上に「皆の前で美蝶さんにからまれて叱られて・・・」
と泣きついたため、美蝶は横上から「つけ上がっとる」と敵視されてしまいました。
実は冴路は横上の情婦で、だからこそ彼女は楼主のヒイキを笠に着て、二枚目の美蝶に対しても横柄な態度を取っていたのです。
美蝶はそんな冴路だけでなく、楼主という立場にいながら娼妓に手を出した横上にもひそかに腹を立てていました。しかも彼は、矢津の港で一番の大網元という有力な旦那を持つ美蝶を差し置いて、次のお職の座を冴路に与えてしまいます。
さらに横上は娼妓の値を下げたうえで数を増やし、同じ時分に複数の客を取る”廻し“と呼ばれるシステムも導入して、東陽楼を「薄利多売」の見世へと生まれ変わらせることを宣言したのでした。
確かに日露戦争が終結してから世の中は不景気に陥っており、それに伴い東陽楼も客が減って売り上げが落ちていました。それでも横上の決断に納得がいかない美蝶は、検梅の帰りにこっそり藤富家へ寄り、見世の新しい経営方針について藤富のおトウさんに相談します。
その結果、藤富のおトウさんも自分と同じく「安売り」には反対であることが分かり、彼が意見してくれるならば横上の計画は撤回されるはずだと考えた美蝶は一安心しました。
とはいえさすがに千代春から冴路にお職が代わるのを阻止することはできなかったため、美蝶は率先して部屋の移動を手伝い、和琴や書画などを運び出すことで冴路のたしなみのなさを当てこすろうとします。
挑発的な美蝶の態度に思わず冴路も激昂し、つかみ合いのケンカに発展しかけたその時のことです。
真っ青になった番頭の八木が駆け込んできて、藤富のおトウさんが倒れたという知らせをその場にもたらしたのでした。
声なきものの唄 110話 感想・考察
１１０話の注目ポイントは、冴路のモノローグです。冴路は、美蝶たちのように以前から東陽楼で働いているメンバーにとっては、先輩たちから受け継ぎ、努力してずっと守ってきた一流の見世の娼妓としての伝統や矜持を壊そうとする悪役的な立ち位置にいるキャラクターです。しかし彼女のモノローグを読めば、冴路もまた辛い思いを味わってきたことや、美蝶たちに対する言動にも彼女なりの理由があることが分かります。
おかげで、元よりどちらが正しくどちらが間違っているとは言えないこのバトルが、さらに深みを増して面白くなっています。安武わたる先生、いつも素敵なお話をありがとうございます。
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